街を歩いていると、ときどき視線を感じる。
私はただ、何の変哲もない服を着ているだけなのに、すれ違う誰かの目が「バンギャ」と判断する。
美容師の手が髪をすくうリズムに合わせて、突然、90年代のV系の話が始まった。
「いやー、あの頃は本当にハマっててさ！」
軽快に語る彼の指先を見ながら、適当に相槌を打つ。私の好みはロキノン系なのに、V系の熱狂は避けられない運命らしい。
リアルの男性の友達といえば、ロキノンバンドをやっていた奴らか、謎のロン毛——妙に気難しく、いつも世界の終わりを考えていそうな男たち。
鬱屈とした音楽の中でしか生きられない彼らと、私はどこかで交差してしまう。
女友達は、懐かしい「古のサブカル女」か、ヤンチャな空気を纏った子たちばかり。
彼女たちの会話は、どこか時代に取り残されたようで、でもそれが心地よいときもある。
そして私は？ どこにでもいるパンピー系。
けれど、この混ざりきらない感覚が、意外と心地よくもある。
ちなみに好みのタイプは金髪で青い瞳のイケメン（二次元）か、エモ系サブカルナード風イケメン（二次元）なので隙はない。該当する人は勝手に推させてもらっている。
都市の夜が青く滲む。
誰かの音楽が、遠くで鳴っている。