言うのも言われるのも好き。なんだかとっても嬉しい気持ちになるから。
私はお菓子屋さんで働いている。だから、毎日お客様にありがとうをたくさん言うしお客様からも言われるの。
「昨日買ったクッキーおいしかったわ~、勧めてくれてありがとう」
「まぁ、きれいに包装してくれてありがとう」
「おねえさん、ぼくのおかしだけべつにわたしてくれてありがとう」
私は今日も張り切って、
「ありがとうございました!またお越しください!」
といらっしゃった全てのお客様を笑顔で見送った。
「ありがとう」が飛び交うこの職場が好きだった。
今日は、仕事の後にAさんと会う約束をしていた。
Aさんとは最近道で声を掛けられてからお付き合いをするようになった。
でもまだAさんから「好き」って言われたことはない。毎週金曜日の夜しか会ってくれないから、他にも相手がいるのかもしれないけれど、私は信じていた。
だって、好きだから。
仕事が終わった私は、Aさんの待つホテルへ急いだ。
Aさんと一緒の布団にくるまっておしゃべりした。
私はAさんの顔をじっと見ながら気になっていたことを言ってみた。
「Aさん、私、Aさんが好き!」
Aさんは一瞬だけ無言になった後、笑顔で
「ありがとう」と言った。
ありがとう、
ありがとう、
ありがとう?
私はAさんの顔をもう一度じっと見た。Aさんは先ほどと変わらない笑顔で私の頭を撫でていた。
私はもう一度言ってみた。
「Aさん、私、Aさんが大好きだよ」
Aさんは目を細めて、
「ありがとう、嬉しいよ」
と言った。
ありがとう、
ありがとう、
ありがとう?
なんで?
なんで、ありがとうなの?
私は、きっとAさんには他に相手がいて、私は愛されていないんだと気付いた。
悲しかった、
Aさんも
見たことのないAさんの相手の人も
「ありがとう」という言葉も
全部が私を悲しくさせた。
私はAさんの胸に顔を埋めた。
Aさんの心臓の鼓動を聞きながら
「僕も〇〇ちゃんが大好きだよ」
そう言ってくれるところを想像した。
この時のありがとうはこんなに悲しい言葉なんだって、初めて知った。
ありがとうはこんなに辛くなる言葉なんだって、私、知りたくなかった。
8月の出勤予定
・8/30(金)12:00~18:00
(14:30~空きあり)
いつも予約を検討して下さったり、写メ日記を読んで下さりありがとうございます
少しでも興味を持って頂けるのが嬉しいです。
いつかお会いできるのを楽しみにしています