夜景を見た。
43階建てのビルの屋上から。
綺麗だった。360度見渡した。どこまでも白と赤が光ってた。
この屋上から飛び降りたいと思った。
必死に悲しいことを考えた。
いつか来てしまう朝を思うと胸が苦しくて、この時間が終わってしまうのが怖くて、今この瞬間に自分で終わらせたいと思った。
夜景が綺麗であればあるほど悲しかった。この時間が特別であればあるほどおしまいが辛かった。
感動も幸せも感じたくなかった。
それを感じてしまったらそれと同じくらいの辛さを感じる感受性が身についてしまいそうで、終わりを考えることで自分から辛くした。
この夜景をずっと見ていられるのなら、この時間に終わりがないのなら、私はもっと素直に感動を味わえただろうか。もしくは、この時間があと1秒先に終わることがわかっているなら、私はもっと素直に幸せに浸れただろうか。
いつもと同じ朝、いつも使っているやかんでお湯を沸かしていつも使っているマグカップに注いだ。私はマグカップに注がれた透明な液体みたいにただ透き通ってなんの感情も持ちたくないと思っていた。