あれは誰が言い始めたのか
どう見ても危険で、だからこそ刺激があった
鉄棒で綱渡りしよう
落ちたら負けね
まだ先生の目も行き渡らない頃
真昼間の校庭で女の子達が4.5人で
左右に分かれ、渡り切ろうと鉄棒に乗る
足元もおぼつかず、バランスを取ろうと
カタカタ震える足を必死で前に出す
脳は大興奮した
ヨロヨロと頼りなく渡り切り
次から次へと別の女の子がチャレンジする
いつしか無駄にスピード勝負になり
よろけて落ちる子が出てきた
そこで止めておけば良かった
誰というわけでもない
ただ、漠然とした負けたくないという
気持ちがバランスを取るより
足を先に出させた
視界が勢いよく横に回転した瞬間
顔面に衝撃が走った
視界が再び見えると真っ青な空と
蒼白な女の子達の、走り去る
怯えた顔が見えた
だらだらと滴り落ちるよだれは
血の塊が混じり、ねっとりと校庭に垂れた
口は裂けて腫れあがり
胸元に折れた歯がブローチのように
張り付いていた
思えば初めて早退したのは
歯が折れた日だ
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