「死」は凪いだ海に似ている
ひたひたと静かに、波が消えて凪ぐように
電池が切れて、コトリと動きを止める
人は死ぬ直前に海の匂いを発するという
本当だろうか
人が亡くなると細胞が死んで
ナトリウムが飽和する
その「ナトリウムが飽和した匂い」が死臭だ
2時間くらいすると死後硬直が始まる
始めに顎関節から硬直して、
8時間くらいすると手足の先まで硬直する
そして時間が経つごとに
(自分の食べてきた物にもよるが)
干物の「くさや」や「チーズ」あるいは
長く放置した「生ゴミ」のように
強烈な腐敗臭へと進む
始めに胃腸から腐敗する
胃液が胃腸を溶かして細菌が繁殖し始める
全体が腐敗すると大量のガスが発生して
身体は青白くなってゆく
そうして風船のように膨れていくのだ
最後の方は暗い褐色になって黒くなり、
やがて腐敗液がしたたり骨がのぞく
生きていた頃の屋台骨だけが残って
母なる大地へと還ってゆく
もしも
自分から海の匂いがするなら
世話する人や家族に悪いなと思う
匂いは記憶と強烈に結びつくからだ
死ぬ前に香を焚きしめて
ほんのりした寂しさにしたい
心を癒す白檀がいい
蒸し暑くなる6月から
お寺や神社で白檀の香りが漂うだろう
その頃思い出してくれるだろうか
たとえ地獄の釜から這い出てきても
海の匂いじゃないなら
夏を楽しんでもらえそうな気がする
そろそろ冬も終わりだ
有象無象の春が来て、また夏が来る
庭に私の心臓と共に埋めた最愛の子は
今も静かにそこにいる
木蓮のお香が、細長くたなびきながら
寄り添ってくれている
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