何の疑いもせずに、コージくんは私の誘いに乗ってきた。
適当にお茶の準備を始める。
警戒されて、立ち話になるかとも思ってはいたけど、実は懐っこい性格なのか、
母の単位が目的なのか、何故か突然不安に襲われてきた。
「コージくんってコーヒー飲めるっけ?」
「できれば紅茶がいいですね」
「ミルク?レモン?ストレート?」
母が紅茶好きで感謝した。
まったく詳しくない紅茶を母の真似事をして淹れていく。
見様見真似だけれど、それなりに様にはなっていると思う。
それに似つかわしくない、露出を強調した格好の私。
突然、家に誘い込んだのだから、部屋着なのは当然だろう。
これぐらいは普通だと思うし、自然だと思う。
むしろ、意識しているかのように着替えている方が不自然。
薄手のキャミソールにカーディガン、それとノーブラの状態。
着替える暇がなかったわけではないが、目的は“ソレ”なのだから仕方がない。
下はショートパンツに生脚。
警戒心の欠片もない恰好で、コージくんから何かをしてこないのかと私は期待している。
「ごめんね、今ミルク切らしてるみたい」
そう、コージくんは女のどこら辺が好きなのか、よく観察。
胸?脚?それともお尻?
どこに視線を向けるかを私は賭けていた。
このタイプの男は絶対に脚が好き。
そしてお尻と後ろ姿が一番好きなはずだ。
男が無言でいるときは、何かを観察しているときだからだ。
ゆっくりと互いの動きを観察するには、いい時間だろう。
突然、私が振り返ると驚いたような顔をしていた。
「レモンでいいかな?」
笑いかけると、コージくんは頷いて、ぼうっとした顔をしていた。
予想外な反応だけど、私は知っている。
じーっと見つめている時に突然、観察対象の者が予想外の動きをすると驚いてしまうものだ。
茫然としているコージくんと見つめ合っている私。
それに気まずい雰囲気を醸し出してみる。
男女に言葉なんて要らないと思うのは、私だけじゃないはず。
だって、私とコージくんの共通の話題なんてあるわけがないじゃない。
あるのは男と女で、二次性徴を迎えた証しである欲望だけ。
伏せられた目蓋が見つめる先が、コージくんの目的の“モノ”なのだと思う。
下着を着けていない所に目がいってしまうのだろうけど、それは本能だから仕方がない。
つづく