決して実らない恋心に蓋をして、若葉は仕事に邁進してきた。
その一方で深野もまた、年の離れた若葉に惹かれていた。
課長という役職に就き、仕事に厳しい深野に対して、若葉は容赦ない態度で立ち向かってくる。
そうかと思えば、ふとした何気ない表情がとても可愛らしかったりする。
これまで仕事優先で恋愛に対して淡白だった深野は、すっかり若葉に魅了されていた。
そして、我慢の限界とばかりに若葉を捕獲しにかかったのである。
「夢かと思ってるのは俺のほうだよ。木崎が年の離れたオジサンの告白にオーケーしてくれるとはね」
「深野課長はオジサンじゃないですよ」
深野のどこにオジサンの要素があるというのだろうか。
そこに立っているだけで絵になるような魅力あふれる男性なのだから。
その上、仕事は出来るし、厳しい中にも周りをよく見ている。
犬猿の上司ではあるけれど、若葉にだけ見せる優しい表情にも心を鷲掴みされる。