こんばんは
佐野ミラです
脳が焼き切れそうでも膝が痛かろうが心に変な衝動があろうが、考えるのをやめたら先生の弟子失格。
冷静になって、よく考えた。
まず第一に、今の私は本来の私じゃない。あの【佐野ミラ】じゃない。今の私は暗くて、でも頑張ろうと無理にエンジン掛けて、でも上手くエンジン掛からなくってエンストになる。みたいなかんじ。
次に明日は年に一度の大切な日。生徒たちの晴れ舞台。そして私の師匠兼元直属の上司である先生を連れて行かなくちゃいけない。
先生のストラップは私が保管しているから、先生学校に入れないでしょう。
これは先生の最後の弟子としての役目。
先生とまた一緒に「京都の"ねねの間"って所面白いですよ!ここは六歌仙の間があって楽しいんす!古典好きには堪らん!」とか「川端康成ならやっぱり『雪国』!川端康成記念館行って〜越後湯沢駅で日本酒飲んで〜温泉入って〜。また日本酒飲むのが楽しいっす!」とか旅行の話をしたいな。
先生が「お前色々な所行ってるな。旅行というよりは学生の時のリゾートバイトの知識だな。穴場を教えてくれて助かる。」って絶妙に褒めてくださって、照れ隠しに何か話さないと!と思ってチラッと横を見ると先生がめちゃくちゃ食べ飲みしてるの。
「……先生、それ何杯目ですか…?食べすぎでは!?」、「…美味すぎて何杯目か忘れた。」って生徒たちが作った豚汁、一緒に飲みたかったな。
明日は特別な日なんです。
だから、やっぱり今日は休む。
先生を連れて行かないとって気持ちもあるけど、生徒たちから「せんせー身体大丈夫?○○は文化祭で焼きそば焼くよ!○○○は軽音で歌うって!私も✗✗✗部で出るよ!絶対見に来てね!」って手紙と寄せ書きが家に届いたときに、この日だけはどれだけ体調が悪くても、足が痛くても、息が苦しくても、"せんせー"の顔して行かないと。
最後に出勤した日に「せんせー…休むの?○○先生と同じ?文化祭来るよね…?」って生徒に言われちゃったんだ。
教員にとって、こんなに嬉しいことはないんじゃないだろうか。
もう常勤ではなくて非常勤講師の私によく懐くものだ。
しかも常勤だった頃の私を彼女たちは知らないのに。何故懐く。何故呼び止めるときに私の白衣を引っ張る。何故放課後に私の元へ勉強をしに来る。
専任や常勤の先生方に私が色々言われてしまうよ。
子供は可愛いね。
明日は可愛い教え子たちに会って、もうすぐ復帰することを伝えないとな。
卒業生たちも来るだろう。
大学に入って変な男に捕まっていないか話をしないといけないね。
もう君たちの担任でも何でもないのにね。
女としてアドバイスさせてくれ。
幸せになってくれ。
そんなかんじ。
明日が楽しみです。
佐野ミラ