~なぜ午後から履物を下ろしてはいけないのか?~
「新しい靴(履物)を、午後から下ろすものではない」と言われたことがないだろうか。
かつての野辺送り、すなわち葬式と、そのときに履かれる草履を思い起こさせるので、縁起がよくないとされたのである。
葬式は午後からするもので、その際、棺を担ぐ人たちは葬式用の新しい草履を履いて墓地へ向かい、埋葬をすませると、草履の鼻緒を切って捨てた。
つまり、新しい草履を午後から下ろすのは、「死」や「死者」を連想させるので、縁起でもないと戒めたのである。
また、「草履を下ろすときには竈の炭(墨)を塗れ」ともいわれた。
竈の神は「荒神」とも呼ばれる恐ろしい神で、火の元となる竈の炭(墨)には、呪的な力があると信じられたのである。