~茶室のにじり口は命を守るためだった?~
茶事を行うための独立した部屋や建物を茶室という。
多くの茶室は狭いうえに、にじり口と呼ばれる出入り口が小さくなっていることをご存じだろうか。
その設計者が、実は千利休である。
わび茶の完成者として知られる千利休は、戦国時代から安土桃山時代にかけて活躍した茶人で、豊臣秀吉の側近という一面をもつ。
さて、現存する日本最古の茶室は京都府にある国宝の待庵で、現在一般的になっているにじり口のある茶室の原型とされている。
にじり口の由来としては、「上位の者でも頭を下げなくては入れない」などとされるが、別の理由も隠されていたようだ。
利休は、「茶室のような狭い空間で、刀を振りまわされたら逃げようがない」と考えた。
そこで茶室の外に刀掛けを設け、丸腰でなければ茶室に入れないようにしたという。
万が一、懐に小刀をしのばせても、にじり口から入るときには邪魔になる。
にじり口は、命を守るための方策とも考えられるのである。