「そんなに構えないでいいよ。俺、牧野とは五歳しか違わないし。店長も今の店が初めてだから頼りないよな」
「そんなことないです。いつも着こなしも素敵ですし、紳士服店の店長らしさが出ていると思います」
店長はきょとんとして、自分の服装を見直し、「一応、マネキンも兼ねているからさ」と、営業用とは全然違う気を許す笑顔を見せた。
その笑顔は反則だ。ドキドキが止まらなくなる。店長は私の隣に深く腰を落とし、椅子の背もたれに頭を預けた。
「飲み過ぎたかな、俺」
「ここで少し座っていたほうがいいかもです」
「隠しててくれるか?」
「はい」