死ぬ前の半年間、自分はろくに家に帰ってなくて世話もほとんどしなかった。
その間にどんどん衰えてたのに、あまり見ることも触ることもなく、その日を迎えてしまった。
前日の夜に、もう私とはほとんど会話がなくなっていた母が、兄と一緒に私の部屋にきて
「もう、動かなくなって、息だけしてるの。目も、開いたままとじれない。最後だから、お別れしてきなさい。」
と泣きながら言ってきた。
そこまでだったなんて知らなくて、びっくりして下に下りていったらコタツに横たわってた。
本当に息だけしかしてなくて、だんだん息も弱くなってるのがわかった。
怒りっぽい犬で、触るだけで唸るのに、その日は何も反応がなかった。
母と兄と3人で、泣きながら朝まで見守った。
そして次の日、単身赴任の父が帰ってきてすぐ息を引き取った。
父のことが大好きだったから、きっと待ってたんだと思う。
『家族全員そろうのを待ってたんだな。』
って思う。
死ぬ間際に飲んだ水は、すごくおいしかったよね?
幸せだったよね?
何よりも、本当にろくに家に帰らず遊んでばかりいて、あなたの世話をしていなかったことを悔やんでる。
父も母も兄も泣きじゃくる中、あたしは後悔ばかりが心に残ってあまり泣くことも出来なかった。
お前が死んでから、おかあさんとも会話するようになったよ。
今まで、おかあさんの話し相手はお前だったもんね。
お前のおかげで、自分がどんなに親を悲しませてたかわかった。
犬にまであたしのこと相談するくらい、おかあさん悩んでたんだね。
お前が死んでから、ふさぎがちだった母も最近元気になったよ。
安心して眠ってね。
昨日、死んでから初めてあなたの夢を見ました。
朝起きて、泣きました。
ほんとうにありがとう。ばいばい。