夜の静寂が部屋を包み込む頃、ふと目を覚ました。薄暗いランプの灯りがぼんやりと照らす部屋。布団の中は心地よく暖かいけれど、心臓はいつもより早く鼓動しているのがわかる。
思い出したのは、夕方のこと。あの人がふいに近づいてきて、さりげなく触れた指先の感触。ほんの一瞬だったのに、あの柔らかい温もりがまだ手に残っている気がしてならない。言葉なんて交わしていないけれど、視線だけで十分に伝わっていた。あの瞳に吸い込まれそうになった瞬間、胸の奥がじんわりと熱くなったのを今でも覚えている。
今夜、目を閉じるたびにその情景が浮かんできて眠れそうにない。あの人も同じように私を思い出してくれているだろうか。それとも、私だけがこんなに熱を帯びているのだろうか。
そっと唇に指を当てると、心の中で想像が膨らむ。まだ何も始まっていないのに、どうしてこんなにも鼓動が止まらないんだろう。明日また会えるのかな……。