夜の静寂が、少しだけざわめきを帯びる時間。
時計の針が進む音さえ、肌に触れる空気のように感じる。
私の手は、まだ温もりを帯びたまま。
「ねぇ、どうする? もっとつづける?」
囁くように問いかけると、彼の目が一瞬だけ揺れた。
その瞳の奥には、少しの戸惑いと、抗えない期待が入り混じっている。
指先が、ゆっくりと滑る。
まるで、触れるたびに相手の心を確かめるように、丁寧に。
「ん…」
微かに漏れる声が、部屋の空気を震わせる。
それだけで、私の中にある何かが目を覚ます。
唇を寄せると、わずかに湿った感触が返ってきた。
「そんな顔しないで。ほら、リラックスして?」
冗談めかして言うけれど、私の声も少し掠れている。
指が触れるたびに、彼の体が小さく震えるのがわかる。
その震えが、私の指先に伝わってきて、まるで電流が流れるよう。
「もっと…?」
問いかけるたびに、彼の息遣いが荒くなる。
布の擦れる音、吐息が混ざり合う音、微かに軋むベッドの音。
部屋中が、まるで私たちの秘密を共有しているかのように、優しく包み込む。
「…ダメ、やっぱりやめられない。」
自分でも驚くほど正直な声が漏れる。
彼の手が、そっと私の髪を撫でた。
「もっと、つづけよう。」
その一言に、私はすべてを許した気がした。
夜はまだ、終わらない。
静かに流れる時間の中で、私たちは何度も、何度でも問いかけていた。
「もっとつづける?」と。
そしてそのたびに、答えは決まっていた。
「もちろん。」